《オール・レ・ミュール》(壁の外)
教育プログラム「学校とオペラ座の10ヶ月」の一環として行われた、ZEP(教育優先地域)の第6学年の生徒22人のための作品。オペラ・バスティーユ・アンフィテアトルにて初演。
振付:セバスチャン・ベルトー
音楽:アルヴォ・ペルト/ヨハン・セバスチャン・バッハ
振付助手:セシル・テイル=ムーラ
「私にとって、《オール・レ・ミュール》は、文化的、教育的であると同時に人間的な意味での冒険を、振付を通して証言するものです。パリ・オペラ座バレエ団のダンサーとして、私はこれまで、古典バレエの大作もコンテンポラリー作品の初演も、踊る機会に恵まれてきました。
アシスタントを務めてくれたセシル・テイル=ムーラの助けを借りて、その経験を伝え、現代のレパートリーの豊かさについて述べること、さらに、3部に分かれた振付作品を提供する、ということには大変興味を持ちました。闇から光へのパッセージのように、バッハとペルトの繊細な対話のように。そこで、一年の授業を通して得る知識に基づいて、おのおののアイデアや要望を出し合うことができる同じ場を、ノワジー=ル=セックの第6学年に在籍する24人の生徒と共有したい、と思いました。
毎回の練習は、床でのウォームアップ、バー、センターと順序を追って始まります。それから、指導を受けながらの即興のトレーニングを行いました。これは、それぞれが自身の創造性を呼び起こしながら、ある空間の中での自由さを発展させることを目的としていました。最後に、生徒たちと共有できる身体言語を見つけようと試みました。また、難しいことに背を向けない、というのではなく、生徒たちがそのような難しさを自分のものにし、そこからもっと自由になるための挑戦をしたりしました。それはつまり、記述された動きや、ソロ、デュオ、アンサンブルでの動きで構成されるひとつの「コレ・グラフィ」、つまりダンスとその動きが描くもののことなのです。
この芸術的で、同時に政治的、社会的でもあるやり方には、数多くのリスクがありました。実際、全てがまだ発展途中という年齢で、外部からやってきた私たちとの対話の、まさに参加者となる第6学年の生徒を、どのように導いていくべきなのか?空間の中で、彼ら自身の身体を自覚させ、また他者の身体も意識させるには?アンサンブルでもっと良く踊るために、(ときどきは)解き放たれることを知るには?彼らを取り巻くものについて、それまでとは異なるように考え、また彼らが発見したものの視点に立てるように導く、という数々の小さな改革と同じく、しかしそれ以上に、ピナ・バウシュが述べていたように、どう動くかではなく「彼らを動かすもの」を見出せるように生徒たちを導く、ということでした。
戦うことの只中へ、そのように自分の身体をさらすことには、常に勇気を持たなくてはいけません。しかし、心から生まれた時のダンスとは、なんと美しいことか。この経験の先に生徒たちが踊ることを続けなくても、この唯一の経験から、皆が特別な感覚と、生きる芸術的遺産についてのなんらかの知識を大切にしてくれるだろう、と私は繰り返し考えていました。詩人エメ・セゼールが言った、この「奇跡の武器」から、何人かが発展させることが出来るだろう密かな大志を持って、彼らがその人生を、壁の外でより良く生きるために。
- シアンス・ポでの踊るコンフェランス
シアンス・ポでの芸術週間の一環として、セバスチャン・ベルトー(彼もまたシアンス・ポの芸術・政治修士号を持つ)は、《オール・レ・ミュール》を発表した。これは、彼が教育プログラム「学校とオペラ座の10ヶ月」で制作した、24人の教育優先地域の生徒のための作品である。生徒たちは、パリ・オペラ座で10ヶ月、2012年9月から2013年6月までのあいだ、初めてのダンスの経験に取り組んだ。
写真:ハルヨ・ヨコタ